資本主義と社会主義について
社会の勉強をしていく上で、資本主義と社会主義って超超超超ちょー大切な概念なのに、教科書や参考書ではさらっとしか説明がなくて、勉強していく上で非常に困ることが多い。
こりゃあ、毎年、生徒たちが理解に苦しむのも無理はない。
そこで、現役の塾講師であるわたくしが、資本主義と社会主義についてできるだけ分かりやすく説明してみます!
■産業革命から生まれた資本主義
大航海時代、ヨーロッパにはインドから手織りの綿織物が輸入され、軽さと模様の美しさなどで、人気商品になる。このため、各国は、綿織物を自国で作るための技術改良を進めた。
18世紀後半になると、イギリスでは蒸気機関で動く機械が使われ始める。それまで人が全部手作業でやっていたことを、機械を使うことで、綿織物は工場で安く大量に生産されるようになった。
イギリスの技術者だったワットという人は、蒸気機関の修理をしているうちに、もっと無駄なく力を出せる新しい蒸気機関を思いついたんだ。そして、その蒸気機関を鉄道だけはなく、工場や炭鉱などに応用し、使うようになっていったわけだ。これは今では当たり前のことだけど、当時は世界初。本当にすごいことなんだ。
さらに、製鉄、機械、鉄道、造船、武器などの産業が急速に発達し始め、イギリスは19世紀には「世界の工場」と呼ばれるようになる。このような、工場での機械生産などの技術の向上による経済と社会の仕組みの変化を産業革命という。ちなみに、日本での産業革命は19世紀後半ごろだから、イギリスは100年ほど先をいっていたわけだね。
産業革命の結果、生産の元手になる資本を持つ資本家と呼ばれる人たちが経営者になり、賃金をもらって働く労働者を工場で雇って、利益の拡大を目的に競争しながら自由に生産や取引をする仕組みが社会に広がったんだ。これを資本主義というよ。
例えば、君がコンビニで働きたいとするよね。だいたい時給800円くらいかな。(1時間働いて800円もらえるってこと)そのお金を払ってくれる人は誰?そう、そのコンビニのオーナーさんだ。
人を雇う側であるオーナーさんのことを経営者というよ。そして、雇われる側の君のことを労働者という。コンビニで働いたら給料がもらえるよね。当たり前だと思う?でも、この当たり前の仕組みをつくったのがイギリスで、今から200年以上も前のことなんだ。そして、セブンイレブン、ローソン、ファミマなどがお互いに自由に商売をしているよね。コンビニによって商品が違うし、値段も違ったりするよね。それは自由に商売をしていいからこそなんだ。これが資本主義。
●ポイント
資本主義という言葉は、資本家が資本をもとに利潤(もうけ)を得ようとする考え方のこと。
だから正確には、この考え方を元にした経済の仕組みを資本主義経済、社会の仕組みを資本主義社会という。本来であれば、「主義」=「考え方」という意味なんだから、資本主義、資本主義経済、資本主義社会の3つはしっかりと区別してほしいところだけど、ほとんどの教科書や参考書では資本主義経済や資本主義社会のこともすべて資本主義と書いている。なので、資本主義経済や資本主義社会のことをそのまま「資本主義」と表現することが多いってことを知っておこう。
■資本主義を批判することで生まれた社会主義
さて、資本主義が広まっていくと、安く大量生産ができるため、物が豊かになった。物が豊かになって働いて給料ももらえて、なんだかいいことだらけのように思えるよね。
でも、すべての物事には良い面と悪い面がある。資本主義の場合は、物が豊かになる一方で、工業の盛んな都市では労働者があふれて住宅が不足し(住むところがない)、公衆衛生の面も不十分でだった。公衆衛生というのは、ものすごく簡単に言ってしまうと住んでいる場所の清潔さってことかな。
君は街を歩いていて、気分が悪くなったり、病気になったりはしないよね?それは街がきれいに保たれているからなんだ。公衆衛生が不十分だと、例えば、道がゴミで溢れていたり、下水の嫌な臭いが漂っていたり、感染症が広がったり、普通に健康に生きていくことさえ難しくなる。
また、失業も多く、労働環境もひどいものがあった。朝の3時には工場に行き、仕事が終わるのは夜の10時ごろ。休憩時間は朝食に15分、昼食に30分。そして、飲み物をとる時間に15分間。さらには、5分遅刻しただけでも、給料を4分の1に減らされたりした。約19時間も働かされて休憩が合計で1時間だなんて、聞いただけでもありえないよね。
例えば、今の日本は労働者は労働基準法という法律に守られているから、労働時間は1日8時間って決められていて、休憩も1時間もらえる。(休憩を含めると9時間)遅刻してはいけないのは当然のことだけど、遅刻したからって給料を減らされるなんてことはまずあり得ない。今でいうブラック企業だってこの時代に比べたら、まだまだひよっこだよ。笑
そこで、労働者は職業と生活を守るために労働組合を結成した。労働組合というのは、労働者が集まって、経営者に対して労働環境の改善や、賃金の値上げを要求する団体のことだよ。そりゃ当然だよね。こんなに働かされて、給料も少なかったら、さすがに文句の一つも言いたくなるでしょ。
資本主義を批判する形で、社会主義という考え方が出てくる。社会主義は労働者たちの不満から生まれた考え方とも言えるね。また、ドイツ人のカール・マルクスという経済学者は『資本論』という本を出して、資本主義を批判していくんだ。
資本主義では会社の倒産や失業もあるから、どうしても貧富の差が激しくなってしまう。お金持ちが優雅な生活をしている一方で、明日食べるものにも困るような人たちもいる。そうなってしまうのは、それぞれが自由に資産を持って、経済活動をするという資本主義のしくみが原因であると考えたわけだ。
だから、全てを国で所有することにして、計画的に生産をおこなう。計画的に生産をおこなうことで企業間の競争を無くし、倒産も失業もない、金持ちも貧乏人もいない平等な社会を実現させようと考えた。これが社会主義の考え方。
資本主義を批判して生まれた社会主義だけど、残念ながら、資本主義の方が圧倒的に支持されていく。世界で初めて国として社会主義を採用していたソ連は解体されて、資本主義であるロシアになったよね。現在、200近くある国の中で社会主義を採用している国はわずか1ケタ。世界中のほとんどの国は資本主義を採用している。今の日本だって資本主義だしね。
経営者たちは資産を持ち、社会を動かすという権力があるからね。いくら労働者たちが声を挙げても鎮圧されることが過去には多々あったんだ。マルクスも、何度も資本主義社会を批判する書物を世に出そうとしたけど、政府に警戒され鎮圧された。
日本でも、大逆事件(社会主義者の幸徳秋水をはじめ12人が処刑された事件)などで社会主義を支持する人たちは弾圧された。
このように、資本主義の人たちが社会主義の人たちを弾圧するという流れはいろいろな場面で起きるから知っておこう。
資本主義:
資本家が資本をもとに利潤(もうけ)を得ようとする考え方
社会主義:
全てを国で所有し、計画的に生産をおこなうことで企業間の競争を無くし、倒産も失業もなく、金持ちも貧乏人もいない平等な社会を実現させようという考え方